*今日のお話しは少し長文になりすぎたのでまとめを先にします。*
①0.1~0.2%程度の食塩水に4~8%程度の糖質を加えたもの(糖質電解質溶液)が推奨される。
②経口補水液(0.2~0.3%程度の食塩水、2~3%程度の糖質)も有効。
③糖質は果糖に偏らない。
④冷たい(5~15℃)の飲料を補給する。
⑤のどが渇く前からこまめに補給。
⑥体重の2%以上の脱水を起こさないよう十分な量を補給する。(体重チェック必要!)
⑦水や汗よりも塩分濃度の低い溶液を補給する場合は口渇感を指標として飲みすぎない。
今日も30度を超える暑い日でした。
父は相変わらず憎まれ口を聞くようになりました。
でもしっかり開眼することができない為、
食事をとることが控えられています。
食事の時はしっかり目を開けて食べるんだよと注意すると、
「わかった(怒)。」
怒る元気も出てきました。
さて今日はスポーツ関係の医学雑誌の熱中症対策の項目に目が留まりました。
大阪市立大学・都市健康スポーツ研究センターの岡崎先生のお話しです。
暑さ対策としての体液と汗について、また水分補給について書いてありました。
もう情報過多になっているとおもうでこれはと思うところだけ書いてみます。
詳しく知りたい方はこちらを見てください→臨床スポーツ医学2018・7月号
*汗を分泌する汗腺では、細胞外液から汗の原液が作られます。
その後導管を通じて皮膚表面に分泌される間にナトリウムイオンが再吸収されます。
汗には再吸収されなかったナトリウムイオンが含まれ一定時間当たりの発汗量が多くなるほど汗のナトリウムイオン濃度は上昇する。
ぼたぼた落ちるような大量発汗時の汗の塩分濃度は高い。
暑さになれてくると(暑熱順化)導管のナトリムイオン再吸収が増加して汗の塩分濃度は低下してくる。
同程度の脱水でも暑さになれていると汗に含まれる塩分濃度は低下している。
*脱水の程度が2%以上になると脱水率1%毎に深部体温が約0.3℃上し、
心拍数が約10拍/分上昇する。
例としてあげられていたのは自転車競技選手の例→暑熱環境下(気温35℃、湿度40~50%)において、運動継続不可になるまで実施(おそろしやー)
水分補給なしでは運動継続によって発汗による脱水量が増すにつれて、
体液量とともに血漿量の低下血症浸透圧の上昇が生じ、
心臓に戻ってくる血液量の低下から心拍数の増加を生じる。
一回心拍出量の低下から筋肉内の血流低下、皮膚血流の低下を引き起こし、
発汗量の低下、深部体温の上昇を引き起こしてくる。
食道温(深部体温)の上昇が亢進して40℃付近に達すると運動継続が不可能な疲労困憊に至る。
発汗に伴う体液量の減少と浸透圧の上昇は循環調節系や体温調節系の機能低下を生じてくる。そのことを介してパフォーマンスを低下する要因となる。
効果的な水分補給の方法
1.補給する水分の成分
脱水を回復・防止するためには、水に加えて塩分を摂取する必要がある。
脱水が生じているときに水分だけの摂取では体内における体液浸透圧の変化が認知されにくくなり脱水前の状態に戻りにくい状態(飲んだ水分がまたすぐ尿として出ていってしまう)になる。
体液と塩分濃度に近い生理食塩水を摂取することで体液量の回復、血漿量の回復も促進される。
小腸で水分とナトリウムイオンの吸収がはやい飲料のほうが良い。
飲料に含まれるナトリウムイオンや糖質などの濃度が高くなるほど、
小腸での吸収は遅くなってしまう。
体液よりも浸透圧の低い飲料が速やかに体内に吸収されるのはそのためである。
小腸ではナトリウムと糖質を一緒に体内に取り組む仕組みがあり、
2~6%程度の糖質を加えると加えない生理食塩水よりも吸収速度が6~10倍に促進される。
腎臓でのナトリウムイオンと水分の再吸収も促進されるので糖分を含む方がよい。
ただ注意しなければいけないことは糖質濃度が高くなるほど水分が胃から小腸へ排出される速さが遅くなる。
糖質濃度が8%以上になると著しく胃排出濃度が低下する。
そのことから暑熱環境下での運動時の水分補給には
0.1~0.2%程度の食塩水(ナトリウムイオンで40~80mg/dl)に、
4~8%程度の糖質を加えたものが推奨されている。
市販のスポーツドリンクの栄養成分表示にナトリウムイオンの量が掲載されているが、ナトリウムイオン量(mg)×2.54で塩分量(mg)を算出できるので確認してみてください。
糖質は果糖に偏らないものが良い。
脱水からの速やかな回復を目的としてスポーツドリンクよりも塩分濃度が高く、
糖質濃度の低い傾向補水液が使用されているが、脱水の程度に合わせて使用すると良い。
注意することは、市販のスポーツドリンクを2~3倍に希釈して水分補給に用いる場合が見受けられるが、暑さ対策として脱水の回復・防止を目的とするなら希釈するべきではない。
市販のスポーツドリンクが甘すぎて為に希釈する場合には、塩分濃度がスポーツドリンクと経口補水液と同等になるように塩分を加える必要がある。
ちなみに1リットルの水分に1グラムの塩分を加えると0.1%塩分濃度が上昇する。
2.補給する水分の量、温度、その他の重要な点
運動前後の体重の変化から脱水量を把握し、一時間以内の運動では70~80%をそれより長時間の運動では運動中に体重の2%以上の脱水を起こさない十分な量を摂取する必要がある(運動前後に体重チェック!!)
おおむね一時間で500~1000ミリリットルを補給し、一回250ミリリットル(コップ一杯?)
を一時間に2~4回に分けて補給することが推奨される。
マラソンや長時間に及ぶ運動時や多量に発汗するときは、汗よりも薄い塩分濃度のもの(溶液)を取り続けてはいけない。
低ナトリウム血症を誘発危険性があるからです。
口渇感を指標として飲みたいと感じる量の水分を自由に補給し無理に飲みすぎない。
飲料の温度については、常温や温かい飲料のほうが消化吸収がはやいと広く誤解されているが(!!!)、冷たい飲料のほうが胃排出速度が速く体液量の回復も速い。
さらに冷たい飲料のほうが直接体温を下げる効果もあるため、5~15℃の冷たい飲料が推奨される。
我々はある程度の脱水が起こるまでは口渇感を感じない。
そのための度が渇く前から水分補給を開始する必要ある。
また一度に多量に飲むより少量(150~250ミリリットル/回)を頻回に分けたほうが、
胃排出速度が速い。
まとめ
①0.1~0.2%程度の食塩水に4~8%程度の糖質を加えたもの(糖質電解質溶液)が推奨される。
②経口補水液(0.2~0.3%程度の食塩水、2~3%程度の糖質)も有効。
③糖質は果糖に偏らない。
④冷たい(5~15℃)の飲料を補給する。
⑤のどが渇く前からこまめに補給。
⑥体重の2%以上の脱水を起こさないよう十分な量を補給する。(体重チェック必要!)
⑦水や汗よりも塩分濃度低い溶液を補給する場合は口渇感を指標として飲みすぎない。