陸上競技と心臓
市民マラソンにおける心停止についてのお話がありました。
(臨床 スポーツ医学 加藤譲先生のお話し)
現在日本国内で行われているマラソン大会、ロードレースは一年間に2000件。
(フルマラソンでも約200件)行われているそうです。
年間100万人以上のランナーがフルマラソンを含めたロードレースに参加していることになりますが、
大会規模はそれぞれ異なり医療体制などについては運営側の方針に一任されていて、
すべての大会が万全な医療サポートを提供できているわけではない事実があります。
ロードレース主催者に対し2002年ロードレースの安全性を高めるため、
医療体制についてのお願いがなされています。
市民マラソンにおける死亡事故のほとんどが心室細動による心臓突然死であるため、
スタートやフィニッシュ地点および中間地点に除細動器を配置するように促されました。
ロードレースに参加するランナー自身の健康管理は各自に任されているため、
定期的なメディカルチェックなどなく大会に参加しているランナーも少なくありません。
ロードレース中に起こる急変自体の特徴は、
医療関係者が必ずしも近くにいるとは言えず、
誰かがその場で対応しなければならないことです。
人間の脳は低酸素状態に弱く、心停止からなにもせずに5分経過すると救命率は半分まで低下してしまいます。
発見者が判断して即座に心臓マッサージ(AED使用、BLS)を開始することが重要になります。
*BLS(basic life support)
コース沿いに配置される審判員や競技役員、ボランティアは緊急時に即対応できるように、
BLS講習会の受講を呼び掛け迅速な初期治療の普及に努めています。
調査期間中心肺停止例は27例。
全員が男性。
発生地点はレース後半に多いがバラツキも多いですが、
コース上のいかなる地点でも発生する可能性あり。
27例中1例死亡を認めたがそれ以外は心肺蘇生やAEDによって救命されました。
(倒れたご本人は救命されている間意識がないため、
知らない間に病院のベッドで寝ていたということになり、
たいへんなことが起きていたという切迫感が生じにくいです。
運よく命がつなげられた事をしっかり味わってほしいです。)
計算上心停止の発生はフルマラソン参加者10万人当たり1.5件。
以上このようなお話しでした。
予防として下記の10ヶ条もあげられていました。
マラソンに取り組む市民ランナー10ヶ条
- 普段から十分な栄養と睡眠をとりましょう。
- 喫煙習慣をやめましょう。
- メディカルチェックを毎年受けましょう。
- 生活習慣病がある方はかかりつけ医とよく相談しましょう。
- 計画的なトレーニングをしましょう。
- 気温、湿度に適したウェアの着用と、適切な水分補給をしましょう。
- 胸部不快感、胸痛、冷や汗、ふらつきなどがあればすぐに走るのを中断しましょう。
- 足、ひざ、腰等に痛みがあれば早めに対応しましょう。
- 感想する見通しや体調に不安があれば、やめる勇気を持ちましょう。
- 心肺蘇生法を身に着けましょう。