自分への愛情のかけ方

生活の知恵的な体調管理

きっかけは咳止め

ずいぶん前の寒い時期。

地元でなく遠く関東からの患者さんが見えました。

 

開口一番。

「夜咳が出て眠れないんだ、咳止めだしてほしい」

「はあ。」

すごく忙しそうに言われまます。

よくよくお話しを聞くと、

明日一番の船釣りをとても楽しみされていたのでした。

でもまってください。

 

「今定期に処方されてる薬はありますか?」と聞いてみました。

 

「あるある。高血圧に、糖尿に、コレステロール大体のんでる。」

にこやかに言われます。

 

「晩酌はしてますか?」

「してる。」

 

「タバコは?」

「30年吸ってたけど止めた。」

 

喫煙は今やめていたとしても、30年も吸っていたら、

風邪を引いた後なかなか治りにくい咳を残します。

 

脱水があればなおさら、痰の粘りが効いてぜんそく様の気管支炎も起こしてきます。

 

風邪がキチンと治らない状態で船釣り。

夜眠れていない。

たぶん前夜祭として今日お酒のまれるかな?

 

釣りが好きな方は苦にはならない移動でしょう。

でもよる眠れないくらいの咳をしている場合は、

薬で抑えてみたとしても、ある一定以上の安静が必要になります。

 

 船の上では、

トイレに行く回数を減らすため、水はあまり飲まないでしょう。

朝の海はとても寒い時期です。

血圧が自宅で測るよりは高くなるでしょう。

糖尿病による心臓のトラブルは痛みを感じないことが多いです。「あれっ、変だな。きのせいかな。」と釣りをしている間に、

問題が大きくなってしまう事も考えられます。

 

せっかくここまでいらして申し訳なかったけど、

寒い海にでてしまったら、救急車はそこまで迎えに行けません。

 

今の状態で、寒い朝に船釣りに出かけたら、

最悪の事態が起こりかねない状態なのだという説明をして、

なんとか思いとどまって頂きました。

 

船釣り前の健康チェック必要です。

 

 

 

 

血液サラサラの注意

良く聞かれる質問は、

「納豆は、血液サラサラの薬を飲んでいたら食べていけないの?」

 

心臓が弱ってきたときに、

心房細動という不整脈が出てきます。

 

心臓の動きが不規則になり

きちんと血液を身体全体に押し出す力がないため、

よどんだ流れの中に血液の塊が出来てしまいます。

 

その塊が身体のどこかに飛んで詰まってしまうのを避けるために、血液サラサラ状態にするんです。

 

むかしは、主にワーファリンを使いました。

 

その場合は、食べる内容を気を付けないと効果が現れないため、

最初に上げた質問には、

「はい、食べないでください。」と返答していました。

 

でも今は、出血を止める経路のいろいろな部分を阻害する薬が開発されて、食事には特に気を使わなくても良くなりとても便利になりました。

 

ただ、ワーファリンも最近の血液サラサラのおくすりも、

気を付けなければならない点があります。

 

それは出血するようなきっかけを作らないようにすることです。

 

一番に気を付けたいのは便秘です。

 

便秘?と思われたと思います。

今は、2月半ばもう少しすれば春がやってきます。

 

こんな時期、一番お水が飲めていません。

 

昼日中は案外ポカポカと暖かく、汗ばむこともありますが、

朝夕が寒く、寝具や衣類もまだ冬仕様。

 

夏のようには飲めません。

 

すると便秘を起こしやすくなり、

痔になりやすくなります。

それに続くように痔出血。

 

じわじわ出血が止まらないと、貧血を起こしてきます。

あまりにひどいと心臓にも負担がかかります。

 

小さなことですが、

良い薬と思ってもその反面怖い状態を招く一因にもなってしまいます。

 

毎日のお通じ、バナナうんちが出る様にお水を十分にとってくださいね。

 

 

 

専門医への紹介

終了間際に見える方はいろいろな事情を抱えていることが多いです。

 

今回は咳でした。

 

「昨日の夜、咳で眠れなかった。」

「横になるとせき込むのだもの。」

いつもと違って声も少しかすれています。

 

もともと心臓が大きい方です。

以前から無理はしないでとお話してきました。

 

①夜寝るころに横になると咳が出る。

②咳で眠れない。

③声がかすれている。

 

今回はただの咳ではないと思いました。

心臓がアップアップしていると思いました。

 

本格的に苦しくなっていない為、

咳止めで何とか明日の仕事を乗り切ろうとしています。

 

咳を止めて症状は改善しますが、

仕事をすることで心臓への負担は増えてしまいます。

 

心電図、胸部レントゲ写真を撮り説明しますが、

「うちの家系は皆心臓が大きいから大丈夫。」

 

こんな時あまり患者さんと懇意になっていてはいけないと反省します。

小さい時の自分を知っている地元の方ほど、

こちらが注意してほしい点はスルーします。

 

いたくも痒くもないときに、

注意喚起しても効果がないことはわかりますが、

今安静にしていれば心臓に負担をかけなくても済むんだよという気持ちで説明しますが、

理解はしてくれません。

 

いかに明日仕事に行かせてくれるか。

症状をどれだけ楽にしてくれるか。

 

妥協案は専門医への紹介となりました。

 

生きるために仕事をするのか、

仕事をするために生きるのか。

 

隠れた病気を持つ方は、体のいたわり方を知ってほしいです。

 

絶食をすることの利益不利益

糖質制限ダイエットや、

小食による長生き遺伝子の活性などいろいろな健康法が叫ばれています。

 

健康な方の体内ではそれほど影響を及ぼさない行為かもしれません。

 

病気で手術、入院などしている方が栄養をおろそかにすると、

その影響はすぐに悪い方向に進んでしまいます。

 

絶食が続くと栄養を吸収する場所である小腸がダメージを受けやすくなるため、内視鏡検査の前日からの絶食の指示なども緩やかになってきています。

 

健康な人だから少しぐらい具合が悪くなっても、他の目的のためにはやってみてもいいじゃないかという考えなのかもしれません。

 

血糖が低下してエネルギー不足になるのを避けるために二つの経路が用意されています。

 

解糖系と糖新生です。

 

解糖系のエネルギー貯蔵期間はせいぜい一日が限度。

 

もう一つの糖新生はエネルギーが、

不足したときに筋肉内のアミノ酸や、

乳酸などが肝臓で合成されてグルコースを作り補います。

 

ランニングをされている方たちは、

BCAA(アミノ酸)入りスポーツ飲料を、

疲労予防にすでに使われていると思います。

 

エネルギーを作り出す経路を調節するのに必要なのは、

酵素です。

 

酵素=タンパク質。

 

その酵素を助けるのはビタミンB群や、亜鉛などの微量元素。

 

いろいろな要素が絡まってエネルギーが生み出されています。

 

ややこしくなりましたが、

 

栄養不足が続いた後の痩せは、

肝臓のグリコーゲンが枯渇してしまい、

代わりに筋肉や脂肪などがエネルギー源として使われた結果というわけです。

 

見た目は痩せてビューティフルでも、体の機能は低下しています。

 

ずいぶん前は、病院でも経口摂取ではなく、

太い静脈に点滴をしていました。

(腸管を使わないところは絶食と同じです)

 

ある外科の先生が、手術をしても傷口が良く治る人と治らない人とがいることに着目して研究を始めました。

点滴内の栄養成分は完璧ですが、

足りないであろう成分を点滴で補充するだけでは、

いけないことに気が付きます。 

何をどこから入れるかの重要性にも気が付きました。

 

筋肉がしっかりしている人はげんきそうにみえますよね?

肝臓の手術をした方でも、筋肉がしっかりある場合、

傷の治り(肝再生)も良かったそうです。

 

筋肉内で代謝されたBCAA(アミノ酸)が、グルタミン酸を作ります。

そのグルタミン酸は腸管のエネルギーとなって栄養素の吸収を良くします。

グルタミン酸はまた、腸管の委縮を予防します。

 

腸管を通して、筋肉と肝臓がつながっていたのです。

純粋に必要な成分を効率良く体内に血管を通して与えるだけでは、十分なエネルギ―が産生されないどころか、

腸管の委縮を起こすだけだったということがわかり、

経口摂取(口から食べる)の重要性が、明らかになりました。

 

見た目の良さは大事ですけれど、

身体に負担のかからない方法を選んでくださいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

イビキは万病のもと?

なくなった主人がかなりのおでぶさんでした。

イビキはかきませんが、

寝起きがあまり良くなくて心配したことがあります。

 

イビキは6人に一人はしているそうです。

笑い話のネタになるだけとおもっていませんか。

 

実は困ったことが起きている場合があります。

先に出した主人のように太った方、(お相撲さん体型)

アルコールを飲んだら、必ずイビキを書くという方(アルコール導入タイプ)など原因がいろいろですが、

簡単に説明すると、

イビキをかくということは、

どこかで空気の通り道が、目詰まりしていることを意味します。

 

原因はさまざまですが、

ここでは、いびきによって呼吸の目詰まりから、

身体にどんなことが起きてしまうのかを、

知ってほしいです。

 

寝ているときに呼吸が止まる病気を、

睡眠時無呼吸症候群と呼びます。

 

簡単に自宅で検査することができるため、

イビキをするという方は一度試されるとよいと思います。

知らなかったでは済まされないことが隠れている場合があります。

 

60代のお父さんのお話です。

仕事人間で、とにかく働きものです。

ある時左胸の苦しさを訴えられ、狭心症の診断で治療を開始しました。

心臓を養っている血管が詰まって起こる病気です。

何年かに一度血管の目詰まりの検査も必要です。

検査では血管には特に問題がなく、特殊な攣縮型という狭心症と診断されていました。

 

ある時、奥さんが「お父さんのイビキうるさくて眠れない。」と、言われます。

 

早速、どのくらいいびきをかいているかの検査をおこないました。

その結果、2分近く息が止まっていることがわかりました。

それが一晩に何度も起きていました。

 

目が覚めていても、2分間息を止めることはかなり苦しいことです。

イビキをかいていなくても、

息が止まっているところもありました。

 

息が止まれば、酸素が全身に運ばれなくなります。

息が苦しくなり、動悸がします。

 

良く聞くのは、夜急に目が覚めると寝ていたはずなのに、

走った後のように息切れしながら目が覚めるということです。

 

酸素不足で起きる症状や、

それが原因で起きる病気はたくさんあります。

狭心症もその一つです。

 

目が覚めていて、自分が息が苦しい状態が続いて起きた病気であると、認識していれば問題はないのですが、

寝ている間に起きているため、病気の自覚がありません

毎晩、息ができない状態が起きているのです。

疲れがたまり、仕事中に眠気を起こしてきます。

交通事故の原因にもなり、ニュースでも一時期報道されました。

 

今日はここまで、いつかまた検査や、治療についてかきます。

(応急処置てきですが、

いびきをかく方は、とにかく横向きで、寝てください。

枕が高すぎると、かきやすいです。)

 

 

 

 

晩酌と休肝日

健診結果を2,3年見せてもらえない時があります。

時間をずらして、私の時間帯に受診しないのです。

 

「連休のあとに健診受けたんでなかった?」

「うーん。」

はっきりしません。

 

春の祭りがある地域なので、連休はアルコールによる肝機能障害を起こしやすいです。

自覚症状はもちろんありません。

 

休肝日の話を時々します。

すると、

「夕方の一杯が、唯一のたのしみなのになあ。」

「うまい酒を存分に飲めないんだったら早く死んだ方がましだ。」とも言われます。

 

毎日アルコールを取る場合、このぐらいならという目安があります。

でもそのことを話すと、

「それぐらいでやめるなんて、水飲むのと同じだ。」とか、

「そのぐらいだと酔わないんだ。」とか言われます。

 

はい。その通りです。

酔わないレベルで切り上げるから、悪さもしないのだ思います。

 

むかしは祭りや、冠婚葬祭など、

年に数回というめったにないときにふるまわれてきたお酒です。

 

現代は手を伸ばせばすぐそこに、飲んでくださいとアルコールのほうから誘いがかかります。

 

楽しいお酒、おいしいお酒を飲んでほしいです。

 

晩酌を続けているお父さんのことを心配して、

時々一人で奥さんが外来に見えます。

 

「最近、夕方4時となると、自分で勝手にお酒を注いで飲むようになって、血圧も寒いと高くなるのに、私がいくら言っても聞いてくれないんだ。」

「今度血圧はかりに来た時に、注意してもらいたい。」

お父さんはお家の中では、一国一城の主なので、

家来に当たる下々の女性のいうことには、

耳をかしません。

(そのような方が多いです。)

 

外食でのアルコールは、ある程度量が限られるかもしれませんが、

自宅で一人手酌のお酒はついつい、少しずつ量が増えていきがちです。

それをそばで心配しながら見ている家族がいること知ってますか?

少しだけ頭の中において美味しいお酒を飲んでください。

できれば週に三日は休肝日設けてくださいね。

身体の扱い方

ずいぶん前になりますが、

40代半ばの漁師さんが、

インフルエンザかもしれないと見えました。

 

その年は天候不順でしけの時が多く、不漁続きでした。

 

前の晩に熱発があり、見えたときには熱が下がっていましたが、

かなりだるそうな表情をされてました。

 

嗜好品(タバコ、アルコール)について確認をしました。

どちらもふだんから、かなりたしなまれていたため、

体調が戻るまではいったん止めてくださいとお話ししました。

 

冬場は天候の影響で、漁に出る回数が限られます。

月に1,2回という年もあるそうです。

 

だからこそ、体調管理しっかりしなければいけないと思うのですが、十人十色です。

 

その方の場合は、パチンコ、アルコールで気を紛らわせるとのことでした。

そこへインフルエンザですから、

面白くありません。

 

自然相手の仕事の場合、思うように仕事の場が与えてもらえません。

その上、板の一枚の下は深い海。

体力も気力も必要とする仕事です。

仕事が思うようにできない苦しみから、

逃避するためのアルコール等は時々であればいいのですが、

時々でなくなります。

 

奥さんは心配で、気が休まらないだろうなと思います。

でも家族のいうことは、聞きません。

 

そこで登場するのが、時々相手になる私です。

こわーい鬼婆役を仰せ使います。

 

いくら言っても家族のいうことはきかないタイプが多いですから、たっぷり飲んだ頃に見えたときには、

すかさず血液検査をおこない肝機能のチェックをします。

大体異常を呈していることが多いので、

出てきた数字を見てもらいながら、なるべく休肝日を取る必要についてお話しします。

 

海の仕事は、うまくいって調子の良い時、

気分は最高です。

でも陸の仕事より、危険が伴いストレスの多い仕事です。

そのストレスを紛らわせるには必要なお酒やパチンコなのかもしれません。

 

身体を大切にしてほしいと思いますが、

その方たちにしたら、

現実的ではないのかもしれません。

 

ただ情報として身体の扱い方を、知っているかいないか。

このまま好きなだけアルコール飲んでいたらどうなるか。

 

具合が悪ければ医者は治すのが仕事だろうと、

普段の生活は顧みてもらえません。

 

日常生活の全体の在り方が大切なのに、

仕事第一主義の方が多く、

具合が悪くても無理をかさねてしまいがちです。

 

「おっかねー」と言われながらも

鬼婆の立ち位置としての声掛けが、

嗜好品による影響が出始める年になる前に、

自分のため、家族のために、

行動を変えるきっかけの一つになればいいなと思います。